漂泊者

ありふれたいつも通りの生活

皿から赤い果実が不意に

こぼれ落ちた 転がってった

汚れに塗れて駄目になった

口下手同士の会話

私にはどこか居心地が良かったんだ

記憶と体温

一人でどうやって生きてきたかを覚えてない

焦るたび解けてった愛情

正しさを取り零すことばっかだ

不器用だ

窓越しに映る眠らない空の移り変りのように

ずれていった仄暗い方へ

深く無為に沈み込んだ

夜の縫い目もわからないほど

もう本当は何もかも全て消して

不覚のままただただ溺れたい

慰めでも それでいいよ

取れないよ もうさ

染みは奥に潜り込んでいた

余韻を黙らせて

耳鳴りが悩みの種だから

思慮 計画 本当

意味がないよ 意味がないよ

あなたが私なしで大丈夫とわかるのも悲しいよ

文脈がバラバラになって

言葉たちがたゆたうなら

全部並び替えたくて

意味のない文字列へと

足掻いて もがいて

埋め合わせたって

得心がいかない

馬鹿だ 弱すぎる

寄る辺も持たずに瞬く星をなぞる

縫い付けるように

傷や穴を星座で塞いで

区切り分けてしまいたいよ

忘れたいこと/忘れないこと

麻酔すらもきかぬ感傷は

水の澱の底へただただ沈めて

終わりにしよう それでいいよ

海沿いを手を取り歩いたこと

脊髄の奥まで震えたこと

目蓋裏に仕舞っとくよ

いつしか宝石になるように

想い出の色はきっと限りなく

透明に近い 消えそうなほど

無意味の中に確かに光っている

続く青 動く鼓動

命を綴る 世界を捲る

ひとつのおわり ひとつのはじまり

振り返らず さよなら私