Tag: 岩内幸乃

煙の木

炭酸を口の中で溶かして 長い袖をぶらぶらしながら 目元だけ化粧して外に出る 夏の青さに目が眩む 自分より背が高い木を 避けて避けて まるで一秒が1時間みたい 触ったら気触れそうな君を見て 暑さと熱さで重くなる 運命に負けてる気がして スタートラインにも立てなくて もどかしい気持ちを吐き出して 夏の煙に巻く 甘い香りを身にまとい 帽子を深くかぶりなおす 耳たぶには輝く星屑を 夏の眩しさに背伸びをする 高いヒールの音を 鳴らし鳴らし まるで大人になったみたい ...

水中で息をする

深淵の遥か先で 息をするのは私の目 空気を含む瞬きが 真夜中の星 泡沫に 君が私にさよならと 手を差し伸べる君の顔 思い出すたび苦しくなって 動けぬままに時が経つ 聞こえるの いかないで 覗き込んだ深い底で 泳いでいる君の瞳 瞬きをするたびひとつ 泡が浮かんで消えてゆく 首を絞めたあの言葉は きっと君の息も詰める 手を伸ばしても動かぬ君は あきらめきれずそこにいる 歩き出す いかないで 水の中で二人 息をしてるずっと ...

よるのせかい

カーテンの隙間から 漏れる街路灯の光 青白いお月様のように きらきら、輝く 街路灯が照らすのは 十字型のステージ 一つの光に包まれる 一人だけの場所 時々聞こえる 自転車をこぐ音 疲れ切って眠たそうで 午前3時前の暗い暗い光の中 空を泳ぐのは誰かの涙で 部屋のベッドで白い枕を濡らすのは 誰かの悩みで おひるよりちょっと悲しいような そんな、よるのせかい 頭の傍で光る 温かい小さな灯 心のお日様のように ...