Tag: 新田晃也

さすらい雲

空を見上げて 聞いてみた 雲よおまえは 何処へ行く 生まれ在所(ざいしょ)で 待ちわびる ひとりぼっちの おふくろに 届けておくれよ 詫(わ)び便り 照る日曇る日 浮かぶのは かわず鳴く声 日暮れ径(みち) 肩の震えを 抱き寄せて 別れ惜しんだ 雨の駅舎(えき) どうしているのか 倖せか 根なし明日なし さすらいの 馬鹿を承知(しょうち)の 裏通り 無沙汰(ぶさた)三年 いたずらに 春夏秋冬(しゅんかしゅうとう) 見送れば 帰って来いよと 夜半(よわ)の風

旅の灯り

ひとりの旅の 夜汽車の窓に 想い出いくつ 走馬灯(そうまとう) 添えぬ運命(さだめ)と 言い聞かせても 空虚(むな)しく心は 空回り 終り見えない 遠灯り ひとりの宿の 湯舟(ゆぶね)に映る 涙の素顔 やるせない 枕添い寝の 寂しさ故(ゆえ)に 温もり恋しと 独(ひと)り言(ごと) 消えるあてない 恋灯り ひとりの旅の 終着駅は 無情に響く ベルの音 残る未練に さよなら告げて 哀しみ棄てます 始発駅 明日は叶えて 夢灯り

雨の宿

ひと夜(よ)限りの いで湯の恋は 咲いて儚(はかな)い 一夜花(いちやばな) つぎの逢瀬(おうせ)を 交(か)わせぬままに すがる背中が 愛(いと)おしい おんな心に 降り注(そそ)ぐ むせび泣くよな ア~雨の宿 枕せせらぎ ほのかに灯(とも)る 影に解(ほど)ける 名古屋帯 隠す恥(はじ)らい 流れにまかせ 揺れて静かに 笹の舟 おんな心に 降りしきる すすり泣くよな ア~雨の宿 後髪(うしろがみ)ひく 別れの夜明け みれん残り香(が) やるせない 思い切れない さだめの川に 浮かぶ面影 夢のあと おんな心に 降り止(や)まぬ しのび泣くよな ア~雨の宿

忘れじの恋

秋の夕暮れ そぼふる雨に 濡れて佇(たた)ずむ 空似(そらに)の女(ひと)よ 丁度(ちょうど)二年か 別れの頃を 思い出させる か細い肩に 忘れたはずの 恋なのに 冬の閑(しず)けさ ひとりの寒さ 白い彼方(かなた)に 時間(じかん)が止まる 今はまぼろし 面影ひとつ 何処へ去(い)ったか 過去(むかし)を抱いて 忘れたはずの 恋なのに 春に咲く花 雪割草(ゆきわりそう)に 涙ひとひら 心のしずく 風に震えて 散る花びらも 夜に迷って 泣いてはせぬか 忘れたはずの 恋なのに 忘れたはずの 恋なのに